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トピックス(2008年9月~12月)

1万884件から4千億円の申告漏れ把握―昨年度の相続税調査の結果

2008年12月22日

2008年6月までの1年間(平成19事務年度)に全国の税務署・国税局が実施した相続税調査の結果を国税庁が公表しました。それによると、海外に資産を移して相続税を逃れる手口による申告漏れが過去最高となっています。

今回の相続税調査の対象時期は、平成17年中と平成18年中に発生した相続を中心として実施したものです。総調査件数は1万3845件(対前事務年度比98.5%)で、このうち申告漏れ件数は1万1884件(同98.5%)でした。申告漏れ割合は85.8%で、前事務年度と同じ割合となっています。

申告漏れ課税価格は4119億円(対前事務年度比101.0%)で、これを申告漏れ1件当たりで見てみると、3466万円(同102.5%)となっています。また、追徴税額は941億円(同100.2%)で、これを申告漏れ1件当たりで見てみると792万円(同101.7%)でした。今回の相続税調査で国税当局は、海外に資産を移すなどして相続税を逃れる事案を集中的に洗った模様です。407件(対前事務年度比111.8%)に対して調査が実施されていて、そのうち、申告漏れがあったのは334件(同114.4%)でした。申告漏れ課税価格は308億円(同208.0%)と高額で、国税庁も「過去最高の申告漏れ課税価格だ」と説明しています。なお、申告漏れ1件当たりの金額は9227万円(同181.8%)となっています。

所得税の確定申告書送信時間を24時間に―国税庁e-Tax

2008年12月22日

平成20年分の所得税の確定申告において国税庁では、電子申告システム(e-Tax)とe-Taxヘルプデスクの受付時間を拡大することにしています。

e-Taxは、会社や自宅のパソコンからインターネットを通じて国税の申告・納付ができる国税の電子申告システムです。通常は、土日祝日を除く月曜日から金曜日の平日午前8時30分から午後9時の間だけ申告データの送信が可能とされていますが、この送信可能時間について、国税庁では、平成21年1月19日(月)から3月16日(月)まで24時間に拡大することにしています。

なお、1月19日は、午前8時30分から利用でき、3月17日の0時を過ぎて受信した平成20年分の所得税確定申告データは、確定申告期限後に提出されたものとなるので注意が必要です。

一方、e-Taxヘルプデスクの受付時間についても、通常は土日祝日を除く月曜日から金曜日までの午前9時から午後5時までとされていますが、平成21年1月19日(月)から3月16日(月)までは土日祝日を除く月曜日から金曜日と、2月22日と3月1日の日曜日の午前9時から午後8時については、受付けることにしています。e-Taxヘルプデスクとは、e-Taxの利用開始のための手続やe-Taxソフト及びその利用のためのパソコン操作などに関する問い合わせに電話で対応する専門窓口として設置されているものです。e-Taxヘルプデスクは、ナビダイヤル(0570で始まる電話番号)を利用すれば、全国どこからでも市内通話料金で利用できる便利なものです。 

自動車重量税・取得税を平成24年まで免除―与党の税制改正大綱

2008年12月15日

このほど、自民・公明の与党が平成21年度の税制改正大綱を決定しましたが、公明党が自民党に持ちかけていた自動車重量税・自動車取得税の免除・軽減措置は無事に盛り込まれています。

自動車重量税などの免除・軽減は、道路特定財源の中にある暫定税率を維持しながら一般財源化する見返りとして、公明党が自民党に話を持ちかけていたものです。結果として、自民党が公表した平成21年度税制改正大綱では「環境性能に優れた自動車への取得・継続保有に係る負担を時限的に免除・軽減する」という名目で措置が設けられました。

自動車重量税は、道路特定財源のひとつで本則0.5トンにつき2,500円(暫定税率込みで6,300円)とされている車検時にかかる国税です。また、自動車取得税も道路特定財源のひとつですが、こちらは購入時にかかる税金で本則取得価格の3%(暫定税率込みで5%)とされている地方税です。

今回の免除・軽減措置の内容は、自動車重量税と自動車取得税ともに「電気自動車」「一定の排ガス基準値を満たす天然ガス自動車」「プラグインハイブリッド自動車」「一定の排ガス基準値を満たすハイブリッド自動車」「平成21年排ガス規制に適合等したディーゼル自動車」については、平成21年から同24年4月まで免除するとされています。

所得税の電子申告控除の適用期限さらに2年間延長―与党の税制改正大綱

2008年12月15日

平成19年分と平成20年分の所得税の確定申告にのみの適用できることになっている所得税の電子申告控除の適用期限が2年間延長されました。

自民・公明の与党が決定した平成21年度税制改正大綱によると「電子証明書を有する個人の電子情報処理組織による申告に係る所得税額の特別控除制度の適用期限を2年延長する」とされています。この制度は、平成19年度税制改正で導入されたもので、通称「電子申告控除」と呼ばれているものです。そもそも同控除は、電子政府の推進のため、国及び地方自治体に対するオンライン申請等を行う際に必要な電子証明書等(住民基本台帳カード+公的個人認証サービスに基づく電子証明書、ICカードリーダライタなど)の取得を税制面で支援するために創設されたものでした。

ただし、同制度の仕組みは、平成19年分又は平成20年分のいずれか1回、その年分の所得税の確定申告書の提出を、納税者本人の電子署名と電子証明書を付して、提出期間内にe-Tax(国税庁の電子申告システム)を利用して行う場合に、所得税額から最高5,000円(その年分の所得税額を限度とします。)の控除を受けることができるというものです。税額控除は、平成19年分又は平成20年分の所得税について、いずれか1回だけ適用できるとされていることから、すでに平成19年分の所得税で利用した納税者は今後適用できない可能性があります。これについては、平成21年度税制改正法案の中で明らかになる予定です。

全中小企業に欠損金の繰り戻し還付制度を―自民税調の21年度改正項目

2008年12月08日

自民党税制調査会(津島雄二会長)が、平成21年度税制改正大綱の取りまとめ作業を行っていますが、注目されていた国民に支給する定額給付金への所得課税は非課税とする方針です。

政府が年度内の支給を公約している定額給付金については、一時所得として課税されるため、人によっては増税となる可能性がありました。そこで、自民税調では、このほど一時所得には計上せず、非課税扱いとする方針を固めました。定額給付金の税務上の取扱いは、原則として懸賞金や競馬の配当などと同じで「一時所得」となります。しかし、一時所得は年間50万円を超えると課税対象となるため、自民税調内では「景気対策なのに実質増税となるのはいかがなものか」との異論が出ていました。

一方、景気の後退が中小企業経営に大きな影響を与え始めたことから自民税調では、創業間もない中小企業が決算で赤字になった場合、前年度に納めた法人税の一部を還付する「欠損金の繰り戻し還付制度」をすべての中小企業を対象にした制度に改める方針を固めました。現行は、設立5年以内の企業だけが適用できることになっています。この改正により、景気後退で悪化する中小企業の経営を支援する予定です。 

学生アルバイトの給料―中国人は非課税なのにインド人は課税

2008年12月08日

多くの中小企業が、年末調整の真っ只中にありますが、外国人アルバイター、中でも中国やインドから来た学生をアルバイトとして雇っている企業の間で税務上の取扱いの確認が盛んに行われています。

国家間の租税協定により、外国人を雇用した日本企業は、その外国人に支給する給与などについて所得税を源泉徴収せずに済むケースがあります。最近、日本国内で増えているのが、中国やインドからやって来た学生のアルバイターです。外国人に支給する給与については、租税条約によって所得税が免除されるケースがあるため、中国人などの学生をアルバイトとして雇用している企業は、注意が必要です。

まず、中国から来た大学生については、日中租税協定によって「現に中国の居住者である者又はその滞在の直前に中国の居住者であった者が、その生計、教育のために受け取る給付又は所得は免税」とされています。ただし、その免税措置を受けるためには、給与等の支払者を経由して「租税条約に関する届出書」を、その給与等の支払者の所轄の税務署長に提出する必要があります

一方、インドから来た大学生も、日印租税条約により「現にインドの居住者である者又はその滞在の直前にインドの居住者であった者が、その生計、教育のために受け取る給付は免税」とされていますが、それは、日本の国外から支払われるものに限られています。したがって、インドから来た大学生が受け取る日本でのアルバイトによる所得は、国外から支払われるものではないので免税とはなりません。 

相続税の課税方式変更には慎重。負担水準改正は前向き―政府税調答申

2008年12月01日

政府税制調査会(首相の諮問機関、香西泰会長>が11月28日に総会を開き、平成21年度税制改正の答申をとりまとめて、麻生太郎首相に提出しました。

今回の答申では、制度上の改正を伴う「相続税」「国際課税」「固定資産税」の3項目にとどめ「所得税」「法人税」などは盛り込んでいません。

その3項目の中で一番注目されているのが、相続税に関する主張です。まず現行の相続税の課税方式については、「同じ額の財産を取得しても税額が異なる可能性があること」、「一人の相続人等の申告漏れにより、他の共同相続人等にも追徴税額が発生すること」、「居住等の継続に配慮した現行の各種特例は、現行方式のもとでは、居住等を継続しない他の共同相続人等の税負担をも軽減する効果があるため、これらの特例の拡充は課税の公平面での不平等の増幅につながること」―といった問題点がありました。

これについて同調査会では、新しい事業承継税制の導入に伴う課税方式の見直しを中心に議論を行ったところ、「現行方式を見直し、本来の遺産取得課税方式に改めることによって、各人の相続税額が、取得した財産に基づき、他の共同相続人等の財産取得や税務申告の状況に左右されずに算出される方式とすべきである」とする意見もあれば、現行の方式について「相続税の総額が遺産総額と法定相続人数等により一義的に定まり、遺産分割のされ方に対して中立的である」と肯定的に評価する意見も出たことから「幅広い国民の合意を得ながら議論を進める必要がある」と無難にまとめています。なお、相続税の負担水準については、相続税の資産再分配機能が低下していることから基礎控除や税率構造を見直し、さらに議論を深めるよう要請しています。

日本経団連会長が自動車や家電製品の買換え促進税制導入求める

2008年12月01日

日本経済団体連合会の御手洗冨士夫会長が平成21年度税制改正に対して、省エネ製品への支援税制に自動車や家電製品を加えるよう強く要望しています。

政府税制調査会(首相の諮問機関、香西泰会長)が平成21年度税制改正に関する答申を麻生太郎首相に提出し、いよいよ来年改正の議論が正念場を迎えていますが、このほど手洗会長が記者会見で「与党税調などで省エネ住宅への税制支援措置などが議論されているが、住宅のみならず、自動車や家電製品などについても、省エネ製品への買換促進税制を検討すべきである。これらの措置は、CO2の排出削減が課題となっている民生・運輸部門の取り組みに資するとともに、内需喚起にも結びつく。経済と環境の両立が期待できる税制だと思う」と語りました。経済対策などでは、影響力のある日本経団連会長の言葉だけに、来年度税制改正議論に大きな影響があることが予測されます。

与党の税制調査会で議論されている省エネ住宅に関する支援税制とは、高断熱窓、高効率設備、太陽光発電等を備えた高性能の省エネ住宅の普及に向けたもので、経済産業省が要望している所得税の住宅ローン控除の拡充措置です。対象となる省エネ設備をローンを組んで購入した場合、そのローンの年末残高の1.2%を10年間税額控除できるよう要望していて、控除対象限度額は3,300万円とされています。

一方、御手洗会長が主張した省エネ製品への買換え促進税制については、環境省が税制改正要望の中で「省エネ家電の普及促進税制の創設」として、エアコンディショナー、電気冷蔵庫について、トップランナー基準を満たすものを購入した場合、その額の5%相当額を買換えた年の所得税額から控除できるようにすることを求めています。

「法人2税の実効税率引下げは早計」―東京都税制調査会の答申

2008年11月25日

東京都税制調査会(会長=神野直彦東大大学院教授)が、平成20年度の答申を取りまとめました。それによると「税及び社会保険料を合わせた企業負担は、高いとは言えないので実行税率の引下げは早計」としています。

東京都税制調査会の平成20年度の答申では、「地方の基幹税のあり方」として、地方消費税・消費税については、地方自治体が増大する担う役割を果たしていくため、財政基盤の強化の必要性を訴え、所得税から住民税への税源移譲に続く次のステップとして「地方消費税の充実が不可欠である」としています。税率については、国・地方を通じた安定的な財源を確保するため「引上げについて積極的に検討し、できるだけ早い時期に選択肢や道程を示すべきだ」としました。ただし、「当面の景気状況に十分配慮するとともに、行政の無駄遣いを厳しく見直す必要がある」ことも付け加えています。 

一方、法人住民税と法人事業税の法人2税と法人税については「税及び社会保険料を合わせた我が国の企業負担は、高いとは言えない。また、実効税率の高さが国際競争力を阻害する主たる要因ではなく、引下げは早計」として、国の実効税率の引き下げに向けた議論を牽制しました。

今後の課題として注目されたのが、個人所得課税を巡る課題です。同答申では「経済社会の活力を維持しつつ、所得税の所得再分配機能を回復していく必要がるとしたうえで、金融資産所得への課税のあり方や給与所得控除の上限設定、高所得者の公的年金等控除の見直し、給付付き税額控除の導入などが今後の検討課題である」としています。 

定額給付金の効果よりも物価の下落で消費は拡大する―日本総研レポート

2008年11月25日

三井住友フィナンシャルグループのシンクタンク「株式会社日本総合研究所」が政府の実施する定額給付金について「可処分所得を押し上げるが、2009年度の名目消費は6年ぶりに減少する」というレポートを発表しました。

日本総合研究所が発表したレポートは「景気後退が長期化するわが国経済~2年連続マイナス成長に~」と題するものです。それによると、2007年末に後退局面入りした日本経済は、「足元で調整が深刻化。今年7~9月期の成長率が2四半期連続のマイナスになったほか、企業マインド、消費者マインドも急速に悪化している」としています。そして、日本の景気について「景気後退局面が長期化する見通し。これは、個人消費は持ち直すものの、欧米の景気の低迷長期化やマーケットの混乱を背景に、企業部門の業況が深刻化することが原因」という展望を示しました。

企業部門の業況が悪化する要因については「原材料コストの低減によりマイナス幅は縮小するものの、内外景気の悪化による売上げ減により、減益基調は持続する。これに加えて、設備稼働率も急低下するため、設備投資は減少傾向が強まる見通し」があるためです。

また、政府が減税措置から切り替えた定額給付金の効果については「可処分所得を押し上げるものの、景気後退による雇用者報酬の減少、消費マインドの悪化により、2009年度の名目消費は6年ぶりに減少する。しかし、物価が大幅に下落するため、実質消費の増勢は拡大。景気の下支え役になる」としています。 

来年5月スタートの裁判員制度。支給される旅費は雑所得

2008年11月17日

来年5月から裁判員制度がスタートしますが、このほど、裁判員などに支給される旅費や日当、宿泊料に関する所得税法上の取扱いを国税庁が明らかにしました。

今回の取扱いは、最高裁判所が税務上の取扱いを想定したものに対して国税庁がそれを承諾した形がとられています。

最高裁判所によると、裁判員制度では「裁判員候補者及び選任予定裁判員として裁判所から呼出しを受けた場合、裁判員等選任手続の期日に出頭しなければならず、その呼出しに応じて出頭した裁判員候補者及び選任予定裁判員には、『裁判員の参加する刑事裁判に関する規則』により、旅費、日当及び宿泊料が支給され、『裁判員法』でも、裁判員及び補充裁判員について、旅費等を支給されることになっている」と説明しています。

  そこで、問題となるのが、その支給される旅費などの税務上の取り扱いでした。最高裁判所では、裁判員などに支給される旅費などは、労務提供の対価として使用者から受ける給付とはいえないから給与所得には該当せず、また、実費弁償的な対価としての性質を有していることから一時所得にも該当しないと判断。したがって「裁判員等に対して支給される旅費等については、その合計額を雑所得に係る総収入金額に算入する」とし、「実際に負担した旅費及び宿泊料、その他裁判員等が出頭するのに直接要した費用の額の合計額については、旅費等に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入する」と想定しました。これに対して国税庁は「貴見のとおりで差し支えない」と回答しています。 

公務員宿舎建設で財務省が不要な消費税8千万円を払っていた

2008年11月17日

会計検査院の「平成19年度決算検査報告」で、財務省が財務局職員の宿舎建設に絡んで、建設会社に支払わなくても良い消費税を約8千万円も払っていたことがクローズアップされています。

会計検査院の報告によると、財務省は関東、東海、近畿各財務局の公務員宿舎赤羽住宅整備事業ほか4整備事業として公務員宿舎の設計、建設、維持管理などを、その整備事業を実施するために設立された5つの特別会社にBTO方式によるPFI事業として発注。契約金額286億9578万円で実施していたとしています。

そして、同検査院が同事業の契約書の中身を調べたところ「建設費相当分は、年1回(2月~5月)元利均等払いによる割賦方式により支払うこと」、「建設費相当分には、施設設計、整備費等事業に伴う費用の総額である割賦元金261億3978万円に加えて、この金額を分割払で5つの特別会社に支払うことから必要となる割賦金利を含むこと」、「割賦金利の計算上の金額は、契約書に記載された建設費相当分から割賦元本分を差し引いた16億7533万円となり、その具体的な計算方法は、施設の引渡時期から年1回到来する各支払時期までの期間に対応する利子額となっていること」を把握。しかし、契約書には割賦金利の金額として明示されているものがないことが分かりました。

同検査院が消費税法を確認したところ、同法第6条の規定で「利子を対価とする貸付金などに類するものには消費税を課さない」とされていました。そこで、同検査院は財務省に対して「速やかに契約相手方と協議の上、割賦金利に係る消費税相当額が契約金額に含まれないよう契約変更を求めるなどの是正の処置」を要求しています。

税務署職員がシステム端末不正に使用して3億円横領―会計検査院報告書

2008年11月10日

国の予算などが適切に使われたかどうかをチェックする会計検査院が、2007年度の決算検査報告書を麻生太郎首相に提出しました。それによると、不適切な経理処理の金額は約1,253億円にものぼり過去最悪となっています。

2007年度の決算検査報告書によると、税金の無駄遣いなど不適切な経理処理の指摘件数は981件、総額1253億6,000万円で、指摘額としては前年度の4倍以上となり過去最悪をマークしました。

省庁別で指摘額が一番大きかった機関は、法務省の約353億円でした。取得した土地建物の登記を行っていないことが「財産管理の面で不適正」な処理と指摘されました。一方、先にマスコミがこぞって取り上げた全国12の道府県を選んで調査した不正経理問題も記載されていて、12の道府県のすべてで不正が把握され、指摘額は約11億3,700万円となっています。

納税者が一番怒りを覚えるのは、やはり国税を課税・徴収する税務署職員による不正です。今回の報告書では、職員が国税の各種事務を処理するシステムの端末機を不正に使用して税金を横領する事件が4件も把握され、その損害額は総額3億43,11万円にのぼりました。中でも大阪国税局左京税務署に勤務していた職員は、国税の各種事務処理システムの端末機を不正に使用して、実在する法人を支払先とする虚偽の還付金の支払決議書等を作成するなどした上で、郵便局で法人の代表者を装い還付金の支払を受け総額3億1,443万円を横領していました。報告書には、この損害額については、平成20年9月末までに4,380万7,553円が同人から返納されていると記されています。

金融庁がリスク管理債権の取扱いを緩和して銀行貸出し環境を整備

2008年11月10日

中小企業の多くが景気の減速により、資金繰りに困っています。中小企業が元気を取り戻せば税収も確実にアップすることから、金融庁が金融機関の監督指針などを改定して融資に応じやすい環境の整備をしました。 金融庁が金融機関に開示を求めるリスク管理債権(回収に懸念がある貸出金)のひとつに貸出条件緩和債権というものがありますが、このほど、金融庁はその貸出条件緩和債権の範囲に含めなくても良い特別な取り扱いを改定しました。 貸出条件緩和債権は、金融機関の監督指針に定められているもので、債務者の経営再建・支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄など、金融機関が債務者に有利となる取決めを行った貸出金で、破綻先債権や延滞債権および3ヵ月以上延滞債権に該当しない貸出金のことです。この貸出条件緩和債権の範囲については例外的な取り扱いがあり、「融資条件の緩和を行っても、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画があれば貸出条件緩和債権には該当しない」と規定されています。金融庁では、このほどこの規定の取扱いを改定して、金融機関が中小企業に対して融資しやすい環境を整えました。 具体的には、同規定の取扱いには「抜本的な経営再建計画」について「概ね3年後の債務者区分が正常先となること」が要件として記載されています。これについて「中小企業は経営改善に時間がかかる」という特質があることから、「概ね3年」について企業の規模に応じた延長を認める旨が加えられました。 また、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」においても貸出条件緩和債権について同様の取り扱いがあるわけですが、「概ね3年後に正常先」とされている部分が「概ね5年(5年~10年で計画通りに進捗している場合を含む)後に正常先(計画終了後に自助努力により事業の継続性を確保できれば、要注意先であっても差し支えない)」に緩和されました。 

転勤命令で買ったばかりのマイホームを空に。住宅ローン減税適用ナシ

2008年11月04日

政府の追加経済対策に住宅ローン減税の大幅な拡大が盛り込まれ、不動産業界などが色めき立っていますが、実際に同減税措置を利用するサラリーマンの間では、取り扱いに頭を悩ませている人が少なくありません。 

景気の悪化から人員整理が始まり、残された社員が人手不足を補うために地方へ転勤を命ぜられるケースはよくある話しです。転勤を命ぜられたサラリーマンの中には、今年マイホームを購入したばかりの人もいて、同年中に転居せざるを得ないケースもあります。そういった人たちが、もし住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)を適用していた場合は要注意です。転勤期間が 1 、 2 年間で、その後に購入した住宅に再居住することにしていても、住宅ローン減税を再適用することができないからです。 

住宅ローン減税の再適用については、一度でも同減税措置を適用していた居住者だけに限り認められています。したがって、今年マイホームを購入して、同年中に転勤先へ転居した場合は、同減税措置の適用要件である「住宅を購入後、その年の 12 月 31 日まで引き続き居住用として使っていること」を満たさなくなり、初年度のローン控除が適用できなくなることから、一度も減税措置を適用していないことになります。そのような人については、将来、空き家だった家屋に再居住したとしても、住宅ローン減税を再適用することはできません。

リサイクル業者や鉄を扱う業者がターゲット―昨年度の法人税調査

2008年11月04日

全国の税務署・国税局が今年 6 月までの 1 年間(平成 19 事務年度)で実施した法人税と消費税の調査状況を国税庁がまとめました。それによると、鉄の高騰が続いたことから、金属を扱う業者に集中的な調査が実施されています。

平成 19 事務年度において全国の税務署は、大口・悪質な不正計算が想定される法人 14 万 7,000 件に対して実地調査を実施しています。そして、実地調査を行った法人のうち 10 万 9,000 件から何らかの非違(ミス)を把握。それによる申告漏れ所得金額は 1 兆 6,259 億円で、前年度に比べて 988 億円 (5.7%) 減少しました。 

仮装、隠ぺいによる不正計算を行っていたのは 3 万 2,000 件で、その不正発見割合は前年度と同じ 21.7% でした。不正脱漏所得金額は 4,268 億円で、前年度に比べて 78 億円 (1.8%) 減少しています。調査による追徴税額は 3,916 億円で、これも前年度に比べて 486 億円 (11.0%) 減少しました。不正発見割合の高い業種は、 1 位がバー・クラブで、 2 位がパチンコ、 3 位はランク外から一挙に現れた再生資源卸売です。リサイクルの名のもと、大儲けをしている業者があることを物語る順位といえます。また、 5 位に構築用金属製品製造、 6 位が自動車修理といずれもランク外からの登場で、中国の北京オリンピックを契機に鉄が高騰したことから、税務署がマークしていたことが伺えます。

一方、法人に対して実施された消費税調査は、 13 万 9,000 件で、そのうち 7 万 6,000 件から何らかのミスを洗い出しています。その追徴税額は 668 億円で、前年度に比べて 54 億円 (7.5%) 減少しました。 

国税がヤフーの「官庁オークション」で今年第3回目のネット公売

2008年10月27日

国税庁が、平成20年度第3回目のインターネット公売を実施します。今回は土地、建物などの不動産やリゾート会員権が中心に出品されます。

公売は、国税を滞納している納税者から税金を徴収するために、その納税者から差押えた財産を強制的に売却する制度です。そして、インターネット公売は、買受申込みなどの公売手続の一部について、ヤフー株式会社の「官公庁オークション」を利用して実施されます。

  平成20年度第3回目のインターネット公売は、土地76件、建物2件、土地付建物15件、区分所有建物5件、リゾート会員権10件が出品される予定です。公売参加申込期間は、10月31日(金)午後1時から11月17日(月)午後5時までで、この参加申込みを行わなければインターネット公売に参加することはできません。

公売では、保証金が必要となりますが、公売保証金額が50万円以下の物件についてはクレジットによる払込みで、公売保証金額が50万円超の物件についてはクレジットによる方法と現金振込による方法が選択できます。公売保証金の提供期限は、クレジットによる方法の場合は、11月17日(月)午後5時までで、現金振込による場合は、11月20日(木)午後2時までです。委任状などの必要書類の提出期限は11月20日(木)までとされています。

買受申込期間は、11月25日(火)午後1時から12月1日(月)午後1時までとなっていて、最高価申込者(落札者)の決定日は、12月3日(水)午前10時です。売却決定日は12月10日(水)午前9時、買受代金納付期限は12月15日(月)午後2時とされています。

婚姻取消された妻は所得税の寡婦控除受けられない

2008年10月27日

サッカー米MLS・LAギャラクシーのイングランド代表デイビッド・ベッカム選手が、夫人で歌手のビクトリアさんと離婚の危機にあることが話題となっています。ところで、日本の税務では、離婚にまつわる制度に意外な落とし穴があります。

夫と死別し、もしくは離婚した人で、扶養親族や生計を一にする子共がいる人は寡婦に該当し、27万円の所得控除(寡婦控除)が適用できます。最近は、外国人と結婚する人が多く、夫が外国人の場合、出身国の婚姻制度によっては一夫多妻制をとっていて、重婚で自治体と争いになるケースもあります。日本の場合は、一夫一婦制なので、重婚の禁止を理由として、そういった外国人男性との婚姻が取り消されることがあるわけです。

そのため、婚姻の取消し後において、妻だった女性が寡婦控除を適用できると勘違いするケースがあります。これは、所得税法で「離婚」について定義を設けていないために起きるものです。国税庁では、「離婚」の解釈については民法の規定で判断しています。

民法上、離婚とは、生存中に婚姻を解消することを言います。また、婚姻の取消しとは、民法の規定に違反した婚姻について、婚姻取消しの判決又は審判により、その婚姻の効力が否定されることを言います。つまり、離婚は、適法な婚姻の解消であるのに対して、婚姻の取消しは、その成立自体に瑕疵又は違法性のある婚姻の解消である点で、両者の性質は異なるわけです。

したがって、所得税法上の「寡婦控除」の要件である「夫と離婚した人」に「婚姻を取消された人」は該当せず、寡婦控除は適用できないわけです。

昨年度の所得税調査3万件増え82万7,000件―国税庁

2008年10月20日

国税庁が今年6月までの1年間(平成19事務年度)に全国の税務署が実施した所得税調査の状況を公表しました。それによると、調査件数は前年度より約3万件も増えています。

所得税の調査には、高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に深度ある調査を行う特別調査・一般調査と、申告漏れ所得等の把握を短期間で行う調査「着眼調査」、計算誤りや所得控除などの適用誤りがあるものを是正する「簡易な接触」があります。このほど国税庁が公表したそれらの調査件数は、特別調査・一般調査が6万件(前事務年度6万3,000件)、着眼調査は17万5千件(同18万3,000件)、簡易な接触は59万1,000件(同54万9,000件)でした。合計で82万7,000件(同79万5,000件)にのぼります。

そのうち申告漏れなどの非違があった件数は、59万2,000件(同57万5,000件)でした。申告漏れ所得金額を見てみると、総額9,635億円(同9,166億円)で、このうち特別調査・一般調査によるものは5,828億円(同5,337億円)、着眼調査によるものは3,371億円(同3,281億円)、簡易な接触によるものは436億円(同548億円)でした。追徴税額は、総額1,322億円(同1,243億円)で、このうち特別調査・一般調査によるものは1,121億円(同995億円)、着眼調査によるものは159億円(同153億円)、簡易な接触によるものは42億円(同95億円)となっています。1件当たりの事業所得の申告漏れ所得金額が高額な業種は1位が貸金業(2,957万円)、2位病院(2,830万円)、3位風俗業(2,100万円)となっています。 

自民税調の証券優遇税制延長決定に財務省は考え方変えず

2008年10月20日

来年度税制改正の内容のつめを行っている自民党税制調査会が、上場株式などの配当や譲渡益への所得税率について、来年以後も現行の一律10%を継続することを決定しました。

上場株式などの配当や譲渡益に対する証券優遇税制の2009年1月以降の延長は、麻生太郎首相が指示した追加経済対策に関連したもので、自民党税制調査会正副会長らによる会議で決まったものです。したがって、来年から適用される予定だった上場株式などの年間500万円以下の譲渡益と100万円以下の配当金にかかる10%特例税率は帳消しとなります。

気になるのは、証券優遇税制を廃止して原則の20%税率に戻し、金融所得一体課税を目指していた財務省の対応です。財務省の杉本和行事務次官は、記者会見で「現在におきましてはまだ総理から指示を受けて与党内で検討が行われている段階だというふうに理解している。まだ私共として何か申し上げる段階ではない。ただし、一般論として、金融証券税制については20年度税制改正において『金融所得課税の一体化』に向けた措置を講じたところなので、こうした取り組みをさらに進めていく必要があると考えている。また、簡素で分かりやすい仕組みが重要。いずれにせよ今後年末に向け関係者の意見を踏まえつつ、政府・与党で検討していくことになると考えている」と語り、様子見の姿勢を崩していません。

株価暴落で個人向け国債の相続税評価まで心配する人も出現

2008年10月14日

世界的な金融危機による株価暴落で、国内の投資家の多くがリスクの少ない投資商品に注目していますが、ここへ来て、財務省が発行している個人向け国債を相続したときの評価の仕方がクローズアップされています。

個人向け国債は低所得層でも手軽に買えるノーリスク商品です。そこで、購入を検討する人が増えているわけですが、心配されているのは、相続が発生したときの評価額の算定方法が分かりにくい点です。個人向け国債の変動金利10年ものの場合は発行から1年、固定金利5年ものの場合は発行から2年がそれぞれ経過すると、いつでも中途で換金できることになっています。したがって、常に中途での換金が可能な個人向け国債は、金融商品取引所に上場されている利付公社債などと実質的に同じように国税庁は取り扱っています。つまり、利付公社債などが金融商品取引所で成立する取引価格により時価を把握しているように、個人向け国債も中途換金の額で評価することにしているのです。

具体的には、「額面金額+経過利子相当額-中途換金調整額」によって計算した金額によって評価します。

なお、中途換金調整額は、個人向け国債の種類、課税時期と利子支払期日の区分及び課税時期(平成20年4月14日以前、同月15日以後)に応じて、変わります。例えば、個人向け国債の変動・10年ものの場合、平成20年4月14日以前のものについては「中途換金日の直前2回分の各利子相当額」で評価し、平成20年4月15日以後のものについては「中途換金日の直前2回分の各利子相当額×0.8」で評価します。

政府の補助金事業5,000億円は削減可能―日本総研が検証

2008年10月14日

シンクタンクの(株)日本総合研究所が「補助金削減論議の進化に向けて」と題するニュースリリースを発表しました。

政府が実施している補助金事業27.6兆円(平成19年度予算)は、税金のムダ使いの温床と言われ続けています。一方で、これまでの歳出削減により、補助金のカットには限界があるという指摘も少なくはありません。そこで、日本総研では、「『平成19年度補助金総覧』における個別補助金の再集計を通じて、複雑で分かりにくい補助金等の内容整理を行うことで削減検討対象のあぶり出しを行った」としています。

この検証作業では、政府の一般会計の補助金等約23兆円のうち、17.2兆円が厚生労働省と文部科学省に割り当てられていますが、そこから地方公共団体向け補助金(11.8兆円)と社会保障関係費や義務教育国庫負担金(1.9兆円)を除いています。また、特別会計からの補助金等4.6兆円のうち、厚労省所管の年金特別会計から地方公共団体向けの0.5兆円についても対象外としています。したがって、日本総研では、検証対象補助金は一般会計と特別会計を合わせて8.6兆円としました。

ムダ削減の趣旨に合致しない補助金としては、国立学校法人や国家公務員共済組合向けのもの、宇宙航空研究や旧日本育英会などへの補助金7.35兆円であるとし、残る1.25兆円が検証対象になり得るとしています。具体的には「補助金総覧」だけではなく国会提出資料の中に「民間団体等」として集計されている社団法人、財団法人、社会保険関係法人などが含まれていて、ここに「削減の余地あり」としました。金額的には0.45兆円から0.55兆円が検討対象と結論付けています。

減価償却資産の5年均等償却は95%償却した翌年から適用

2008年10月06日

平成19年度税制改正で減価償却資産の償却方法が大幅に改正され、100%償却が可能となりましたが、償却限度額95%を超えて償却し始めるときのタイミングで戸惑う納税者がクローズアップされています。 

減価償却とは、業務に使うことによって価値が減少する資産、いわゆる減価償却資産について、その取得価額を使用可能期間に費用として配分する計算手続きのことです。そして、実際に償却するときには償却限度額というものが規定されていました。その償却限度額については、資産を除却しない限り、減価償却資産の取得価額の95%までとされていました。

それが平成19年度税制改正で100%償却できることになったのです。具体的には、95%まで償却が進んだ資産は、それ以後5年間で全額均等償却可能とされ、1円(備忘価額)まで償却できることになりました。

そこで、個人事業者の間では、95%まで償却したらその年から5年間の均等償却が適用できると思い込んでいる人が意外と多くいます。これについて国税庁では「5年均等償却は、減価償却費の累計額が取得価額の95%相当額に達した年分の翌年分から適用されます」と説明しています。これは、「平成19年3月31日以前に取得した一定の減価償却資産で、各年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入された金額の累積額が取得価額の95%相当額に達している場合には、その達した年分の翌年分以後の5年間で、1円まで均等償却する」とされている所得税法施行令第134条第2項に基づいています。

日本経団連が消費税率10%と5%の複数税率設置を提言

2008年10月06日

(社)日本経済団体連合会(日本経団連、御手洗 冨士夫会長)が「税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言」を発表しました。

日本経団連の今回の「税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言」で注目されているのは、「当面の一体改革の具体策」です。そこでは、「社会保障制度の綻び解消や基礎年金の安定的財源確保、基礎的財政収支の黒字化などに向け、2009年度から2011年度の3年間を第一フェーズと位置づけて、税・財政・社会保障の改革を一体的かつ連続的に措置すべき」としています。ただし実施に当たって「経済情勢や歳出入への影響に注意し、柔軟かつ機動的な判断が必要になる」ことも付け加えています。

そして、2010年度、または遅くとも2011年度を目途に「中低所得者層を対象とした、5年程度の時限措置として消費税率1%相当規模の大胆な所得税の定額減税の実施(例えば、世帯当たり10万円程度)」や「社会保障制度や少子化対策、基礎的財政収支の黒字化に向け、消費税率を5%引き上げ10%にし、地方の財源確保と活性化に資するよう、国7%、地方3%の配分を行う。同時に基礎的な食料品等に関しては軽減税率(現行の5%を維持)を検討する」、「社会保障番号を活用した納税者番号制度の導入する」ことを要求しています。

一方、法人企業については、「諸外国で進む法人実効税率引き下げ競争への対応はわが国経済成長のための主要課題である」とした上で、「地方法人特別税の廃止や地方法人二税の見直し」、「欠損法人による適切な応益負担」などを求めました。 

税制改正要望する金融庁とそれを検討する財務省。中川大臣が板挟みに

2008年09月29日

このほど誕生した麻生内閣では、中川昭一元農林水産大臣が財務大臣と金融担当特命大臣を兼務しています。金融庁と財務省、業界に有利な税制改正を要望する側とその受け入れを判断する側との間で、中川大臣がどのような舵取りをするかに関心が寄せられています。

金融庁から見ると、麻生太郎首相が自民党の幹事長だった今年8月に少額貯蓄非課税制度、いわゆるマル優の証券版の導入を提唱しました。それを受け、金融庁は財務省に対して来年度の税制改正要望として、小口投資家向けに上場株式等への投資に対する配当を毎年一定額非課税とする英国の個人貯蓄口座、「ISA制度」に似た非課税口座制度を設けることや、高齢者を対象とした配当金の非課税制度の導入を盛り込んでいます。

一方、財務省の立場とすれば、昨年末に政府・与党が合意した税制改正大綱で、所有する上場株式の配当への軽減税率10%を2008年末で廃止し、本則の20%に戻すと明記されていることを堅持しようとしています。また、租税法の専門家などからは、金融所得の一体課税が叫ばれていて、「課税の中立性の観点から軽減税率など設けて税制を複雑にすべきではない」といった指摘を受けています。

中川大臣はまさに板挟みとなっているわけですが、「私は麻生さんの限定的な証券マル優制度は検討に値すると思っている。もちろん財務省あるいは金融庁というひとつの分担があるから、その中でよく詰めて頂きたいと思う」として記者会見では早くも三方に気遣う場面が見られました。

倒産した会社の未払い給与に課税される所得税の納付義務者は誰だ

2008年09月29日

企業倒産が相次ぎ、景気後退を肌で感じるようになりました。倒産した会社で働いていた従業員たちは、未払い給与に頭を悩ますことが多いわけですが、特に破産管財人による清算の仕方には強い関心を寄せるものです。

民間調査機関の帝国データバンクの調べによると、今年8月の倒産件数は1,018件を数え、3ヵ月連続で1,000件を超える高水準となっています。負債総額も8,148億5,800万円で、今年最大を記録しました。

企業が倒産した場合は、破産管財業務の一環として、破産手続開始の決定(破産宣告)と同時に解雇となった破産法人の元従業員に対する未払い給与は他の債権者に優先して配当が行われるものです。退職金についても、破産管財人の判断で、他の破産債権者に優先して、元従業員に配当が実施されます。ただし、それは倒産した会社に配当できるだけの財産が残っている場合で、退職金が100%支払われる可能性はまずありません。

そこで、少しでも手取りを多くしたいと誰もが考え、中でも支払わなければならない所得税がいくらになるのかに関心が寄せられます。原則として、破産債権である未払い退職金が配当された場合は、所得税法上の「退職手当等」に該当します。また、破産法人は、破産宣告後も破産財団に係る実体的権利義務の帰属主体なので、破産債権に対する配当や財団債権に対する弁済に係る経済的出捐の効果の帰属主体は破産法人となります。したがって、破産法人が退職手当等に係る源泉徴収義務者です。しかし、破産財団に対する管理処分権は破産法人ではなく破産管財人が専有していることから、源泉所得税の徴収・納付義務者も破産管財人になります。よって、配当金に課税される所得税については、破産管財人に問い合わせるのがスジなのです。 

固定資産税全額免除される独自の住宅耐震改修優遇税制を都がPR

2008年09月22日

東京都が「災害に強い東京」の実現へ向け、独自の住宅耐震改修優遇税制をPRし始めました。

東京都では、今年から住宅の耐震化を一層促進するために、23区内限定で旧耐震基準に基づいて建築された住宅の「建替え」と「耐震改修」を税制面から支援しています。これは、都が目標としている住宅の耐震化率90%達成のために設けた措置で、『10年後の東京』がめざす災害に強い東京を実現するためです。

まず、旧耐震基準で建築された住宅とは、昭和57年1月1日以前の基準で建てられた住宅のことです。次に、税制面の支援ですが、住宅を「建て替えた場合」は床面積にかかわらず固定資産税全額が減免されます。また、住宅を「耐震改修した場合」には、1戸あたり120㎡の床面積相当分までの固定資産税が全額減免されることになっています。

この制度が適用できる要件については、「建て替えた場合」は建替え前後の家屋の(1)所有者が同一で、(2)ともに23区内に所在し、(3)取り壊しと新築が1年以内―の場合に、取り壊した家屋1戸につき、新築した家屋1戸の固定資産税が減免されます。なお、平成21年1月2日から平成27年12月31日までの間に建替えが完了したものについて、3年度分の固定資産税が減免されます。

「耐震改修した場合」は、現行の耐震基準に適合する耐震改修で、使った費用が1戸あたり30万円以上の場合に「平成20年から同21年の間に改修が完了したもの」は3年度分、「平成22年から同24年の間に改修が完了したもの」は2年度分、「平成25年から同27年の間に改修が完了したもの」は1年度分の固定資産税がそれぞれ減免されます。 

裁判で保険金の支払いが確定。判決日が保険金を受け取った日

2008年09月22日

兵庫県警巡査らがゴルフでホールインワンを達成したと偽り保険金をだまし取った事件が話題となっていますが、損害保険は保険事故の内容確認が難しく、裁判沙汰になることもあることから、税務上も保険金を収受した日がよく問題となります。

損害保険の場合、事実関係を立証することが困難なケースが少なくありません。そのため、保険金の支払いを巡って保険金受取人と保険会社との間で訴訟にまで発展することもあります。

裁判となると、気になるのが受け取る保険金の申告時期です。生命保険契約などに基づく一時金(満期保険金や死亡保険金)は、一時所得として所得税の確定申告が必要ですが、裁判で保険金受取人が負けた場合は、当然、保険金は入ってこないので、確定申告の必要はありません。あくまでも保険金受取人が勝訴して、保険会社からの保険金の支払いが確定した場合に申告を税務署にしなければならないわけです。

原則として、一時所得の総収入金額の収受した時期については「その支払を受けた日」とされていますが、その支払を受けるべき金額がその日前に支払者から通知されているものについては、その「通知を受けた日」が収受した日とされています。生命保険契約などに基づく一時金や損害保険契約などに基づく満期返戻金等のようなものについては、その「支払を受けるべき事実が生じた日」が収受した日です。

保険金の支払いを巡る裁判では、その「支払を受けるべき事実が生じた日」の保険事故自体や免責事由にあたるかどうかが争われることが多く、保険事故が発生しただけでは、必ずしも保険金収入の実現可能性が客観的に認識できる状態にあるとは言えません。よって、国税庁も「保険金支払の判決などがあった時を保険金の収入時期として差し支えない」と説明しています。 

中小の病院倒産相次ぎ税制支援求める声高まる

2008年09月16日

かつてない勢いで病院が倒産しています。新しい医療技術を導入すれば受診者数を増やすことができ、経営も安定することから、多くの中小規模の病院が高額な医療機器の購入を支援する税制措置を求めています。

民間調査機関の帝国データバンクの調べによると、「病院」の2007年の倒産件数は、前年比3.6倍の18件でした。「診療報酬改定(引き下げ)」や「医者不足」だけでなく、患者やその家族の医療に対する関心・知識の高まりから、大規模病院へ患者が集中し、中小規模の病院を中心に厳しい経営環境に置かれています。

新しい医療機器を購入して、医療技術の高度化を図ることにより、中小の病院の倒産を防止することができるわけですが、資金面で余裕がないのが実情です。そこで、税制による医療機器購入の支援措置を求める声が中小の病院の間で高まっています。

現行の税制措置として考えられるのは、購入した設備について「30%の特別償却または7%の税額控除」が認められる中小企業投資促進税制の活用です。具体的には、超音波診断装置、人工腎臓装置、CTスキャナ装置、歯科診療用椅子などの医療機器について同税制が使える可能性があるはずなのですが、国税庁によると「それらの医療機器が耐用年数省令別表第一の『器具及び備品』のうち『8 医療機器』に該当し、『機械及び装置』には該当しないので、中小企業投資促進税制は適用できない」と回答しています。 

平成21年度税制改正で「教育費控除制度」創設を―文部科学省

2008年09月16日

文部科学省が平成21年度税制改正要望をまとめました。注目されているのは、家庭の教育費負担を軽減する所得税の教育費控除制度の創設です。 

国税庁の調べによると、平成18年中に民間企業が支払った給与の総額は200兆346億円で、前年より1兆5,456億円(▲0.8%)減少しています。サラリーマンの賃金の減少傾向にブレーキがかからない状況があるわけです。一方で、少子化により生徒数が減り学校経営が困難になっていることから、学費を値上げするところが相次いでいます。つまり、一般家庭が投資する子供の教育費負担が重さを増しているわけです。 

そこで、文部科学省では、平成21年度税制改正要望に一般家庭の教育費負担を軽減する「教育費控除制度の創設」を盛り込みました。具体的には、現行の特定扶養控除制度について「教育費を勘案した新たな上乗せ措置を講じること」を求めています。そして、税制の抜本改革において扶養控除制度の見直しが行われるときには、現行の特定扶養控除に代えて、「教育費控除制度」を創設することを要求しています。 

特定扶養控除に対する新たな上乗せ控除額については、所得税が6万円で、住民税は3万円としています 

ちなみに現行の扶養控除制度は所得控除方式で、扶養控除の控除額は、所得税38万円、住民税33万円となっています。また、特定扶養控除の控除額は、所得税が63万円で、住民税は45万円です。対象者は16歳から22歳までの子供で、その子供を持つ親の所得から控除されます。 

ヤフーのオークションサイトを利用。国税の第2回インターネット公売

2008年09月08日

国税庁が今年第2回目のインターネット公売を実施します。参加申込みは9月11日からです。 

第2回目のインターネット公売に公売財産を出品するのは、8国税局と沖縄国税事務所、そして、11の税務署です。公売が実施されるサイトは、平成20年度に一般競争入札で決定されたヤフー株式会社が運営するオークションサイト「官公庁オークション」です。そして、そのサイトで国税局などが公売にかける財産は、絵画や宝石類、陶磁器などの動産です。 

今回のインターネット公売のスケジュールは、まず、公売参加申込期間が今年9月11日13時から同月25日17時までとされていて、買受申込期間は、今年10月2日13時から同月6日13時までとされています。最高価申込者の決定日は、今年10月8日10時で、買受代金の納付期限は、同月15日14時までとなっています。 

そもそも公売は、国税の滞納者から税金を徴収するためのひとつの手法で、滞納者から差押えた財産を強制的に売却する制度です。したがって、公売により支払われた買受代金は、滞納されている税金の穴埋めに使われます。国税庁では、ヤフーの官庁オークションで、買受申込みなどの公売手続の一部がネット上で行えることから、多くの人々の参加を期待しています。 

管理者を置く財団などに贈与税を課税-国税庁が通達改正

2008年09月08日

国税庁が相続税法の細かな取扱いを定めている「相続税法基本通達」の一部を改正しました。今年12月から設立が可能となる一般社団や一般財団に財産を寄附すると、贈与税が課税されることがしっかりと規定されています 

政府の公益法人改革により誕生したのが「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」です。これまで社団や財団を設立するには、監督官庁による厳しい審査を必要としましたが、同法では、公益性のある事業を行いたい人が簡単に社団や財団を作れるようにしています。ただし、会員限定のサービスが可能であることから、税の優遇措置が適用できなくなりました。 

そこで、国税庁では、税の優遇措置が適用できない社団や財団が誕生したことにより、そういった団体への取扱いの整備を進めています。今回は、相続税基本通達を改正し、これまで代表者や管理者を置く人格のない社団や財団を設立するときや、単純にそういった社団などに財産が贈与された場合でも、各事業年度の所得金額の計算上その財産価格を益金に算入しなければ贈与税はかからないと定めていた取扱いを見直しています。 

具体的には、代表者や管理者を置く人格のない社団や財団は、個人とみなして贈与税が課税されることになりました。さらに、持分の定めのない法人も財産の贈与を受けた場合は、個人とみなされ贈与税が課税されると規定されています。 

「新型窓口販売方式」の第272回個人向け国債の募集9月2日に開始

2008年09月01日

新型窓口販売方式による第272回2年利付国債の募集が9月2日にスタートします。投資リスクが低いことから、この個人向け国債は今回も人気を集めそうです。 

第272回利付国庫債券(国債2年もの)の発行条件は次の通りです。

募集期間は、平成20年9月2日から同年9月24日までとなっています。表面利率は年0.7%で、税引後は年0.56%になります。募集価格は、額面金額100円につき100円01銭で、申込み単位は、額面金額で最低5万円から5万円単位とされています。1回の申込み当たりの上限額は、額面金額で1億円となっています。 

発行日は、平成20年10月6日で、利払日は、毎年3月15日と9月15日の年2回となっています。償還期限は、平成22年9月15日です。 

国債は、税収を補うための国家財源のひとつです。そのため、財務省では、国債の円滑かつ確実な消化を図るために、平成15年3月に「個人向け国債」の発行をスタートさせました。それにより、個人投資家の保有割合は順調に増加しましたが、さらに個人に国債を購入しやすくするために考え出されたのが「新型窓口販売方式」の国債です。平成19年10月に日本郵政公社が民営化されたことに合わせて、それまで郵便局にのみ認められていた募集取扱方式による国債の販売方式を「新型窓口販売方式」として他の民間金融機関に拡大しました。従来の郵便局の方式は、財務省が指定する価格によって募集を行い、募集残額が出た場合は日本郵政公社が引受ける一種の委託販売方式でしたが、「新型窓口販売方式」は、その募集取扱方式から募集残額を引受ける義務を無くしたうえで、郵便局以外の民間金融機関でも販売できるようにしたものです。 

環境税導入のための専門委員会がいよいよ始動

2008年09月01日

環境省の「グリーン税制とその経済分析等に関する専門委員会」が9月3日に第1回会合を開きます。環境問題対策として環境税を導入すべきかどうか、その研究がいよいよ始まります。 

環境税については、今年3月に閣議決定された「京都議定書目標達成計画」の中で「引き続き、国民経済や産業の国際競争力に与える影響や諸外国における取組みの現状等を踏まえ、検討すべき課題である」とされています。また、6月に閣議決定された「骨太方針2008」や7月に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」においても「本年秋に予定されている税制の抜本改革の検討の際に、道路特定財源の一般財源化の問題にとどまらず、環境税の取扱いを含め、低炭素化促進の観点から税制全般を横断的に見直し、税制のグリーン化を進めること」とされました。 

これらを受け、環境税を含めグリーン税制の在り方などについて検討するため、技術的・専門的な見地から調査・分析を行うことを目的として東京大学大学院経済学研究科の神野直彦教授を委員長とする「グリーン税制とその経済分析等に関する専門委員会」が、環境省の中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会の下に設置されました。 

そして、同専門委員会の第1回会合が、9月3日、東京・霞ヶ関の中央合同庁舎第5号館環境省第一会議室において公開で行われます。増税だけに頼った安易な環境対策が講じられないよう、納税者は厳しく監視していく必要があります。